Daiwa Millionaire V (1976)
Gear ratio - 3.5 : 1
Wait - 330g
Fishing power - A style = 8kg B style = 16kg
Line capacity - mono#5 = 180m mono#6 = 150m mono#7 = 120m
ダイワ精工製。同社初のベイトキャスティングリールです。初代モデルは1973年に販売されました。
日本の釣具メーカーとしてはオリムピック釣具が先駆け、北米向けにベイトキャスティングリールをOEMしていましたが、ブランドも販売も北米メーカーの製品だったので、純日本製 ("日本メーカー製" の "日本ブランド")という点では、ダイワのミリオネアVが日本初といえます。
ミリオネアVは1973年〜1976年と4年にわたり日本国内外で販売され、とくに北米で人気を博したモデルでした。日本国内ではVの他に上位モデルにあたる "ミリオネアG-5" も同時販売されました。
いつのまにか、ぼくはアンバサダーより、ミリオネアのほうが魅力的に感じるようになって、気づいてみればオールドアンバサダーよりオールドミリオネアのほうが所有台数が多くなってしまいましたw
画像のミリオネアVは1976年販売の北米向け最終モデルです。ミリオネアVはデビュー時はブラックボディでしたが、後期型ではカラーがグリーンに変更され、エンブレム(クレストマーク)の意匠も、他社とは明確に差別化されたオレンジ色のデザインに変更されました。(←これがカッコいい)
ミリオネアVには "いわくつき" ともいえるエピソードが諸説あって…といってもメーカー側の公式情報があるわけではありません。
一般認識としては、ミリオネアVはABU Ambassadeur 5000Cの模倣品であった…ということです。とくに70年代のルアーフィッシングブームを経た古いアングラーの間では周知の事実(?)とされていて、ミリオネアVは5000Cと全く同じサイズ、同じ仕様で、パーツに互換性がある、とまでいわれてきました。
構造が酷似しているのは承知の上で…。アンバサダーとミリオネアVのパーツ互換については情報が乏しく、このパーツはここと互換がある・無い、といった情報はネット上ではほとんど見かけません。
精度の高い解説をしているWebサイトは、概要解説では "みりおね屋" 。内部メカまで深掘りしているのは、"Abuのお姉さん" くらいかな…。
そんなわけで、自分の手持ちのアンバサダー5000CとミリオネアVの実物を使って、"パーツ適合" に焦点をあてて比較検証してみることにしました。
まぁ…約半世紀も前の古いリールを掘り下げたところで、何がどうなるわけでもないんですが、なぜか気になったのでやってみました。
細かなパーツひとつひとつを5000Cと比較したわけではないので、完全解剖…とまではいかないですが、工具無しで組み換えできるところまでは検証しました。
画像左はダイワミリオネアV。右はABU 5000Cです。細かな意匠はちがえど、サイズもパーツ構成もそっくりです。
右カップ(ドライブユニット)を外してスプールを取り外してみました。右カップのメカプレートのカシメの数や位置は全く同じですね。5000Cのほうは浅溝スプールですが、スプールを構成するパーツもそっくりです。
画像左:ミリオネアV + 5000Cスプール
画像右:5000C + ミリオネアVスプール
スプールを相互で入れ替えてみました。ミリオネアVに5000Cの浅溝スプール。5000CにミリオネアVのスプールを組み込んでみました。スプールはVと5000Cで互換性があることがわかりました。
画像左:ミリオネアV + 5000Cスプール + 5000C右カップ
画像右:5000C + ミリオネアVスプール + ミリオネアV右カップ
次は右カップ(ドライブユニット)入れ替えです。問題なく取り付けられ機能も問題ありません。
この時点で、ミリオネアVと5000Cの主要パーツは互換性があることが証明できました。完全互換です。フレーム、左右カップ、レベルワインダー、スプールなど…少なくともAssyレベルでは寸分違わず組み替え可能です。半分ABU、半分ミリオネアVというゲテモノがカンタンにできてしまいます。
…ということは、Availの5000C用軽量スプールなどがミリオネアVにも使えたりするわけですね。
ちなみに、ミリオネアVには、ひとつだけ5000Cとは大きくちがう仕様があります。それはドラグクリック…。ミリオネアVにはドラグクリックが無いのです。後年の80年代末期になるとABUもドラグクリックを廃止したモデルが出始めました。ミリオネアはそんなトレンド(?)を先取りしていた…かどうかはわかりませんが…w ドラグクリックレス仕様はABUよりダイワのほうが先だったりしますw
ゴールドカップが特徴の日本国内販売 "ミリオネアG-5" も検証してみました。
こちらは条件付きでパーツ入れ替えが可能でした。
画像左:5000C + G-5スプール + G-5右カップ
画像右:G-5 + 5000Cスプール + 5000C右カップ
ミリオネアG-5は、5000Cとはスプールの仕様がちがい、5000Cとは完全互換ではありません。画像のように5000Cのスプールと5000C右カップがセットでなければ組み付けられません。
画像左:G-5右カップ + G-5スプール
画像右:5000C右カップ + 5000Cスプール
画像ではわかりにくいですが、G-5はスプールシャフトが5000Cより微妙に太く作られていて (軸受け部は同じサイズです) G-5スプールを5000Cに取り付けることはできません。5000Cのピニオンギアの穴径が小さくてG-5スプールのシャフトが通らないのです。逆に5000CのスプールをG-5に取り付けることは可能です。ただしピニオンギアとスプールシャフトのクリアランスが(純正より)大きくなるので、耐久性に問題がでるかもしれません。もしこの換装仕様で実釣に使うのなら自己責任というかんじですね…w
まぁこんな情報…ダレトク?なかんじですが、古釣具好きの自分としては、どうしても確かめてみたかったのですw
さて、1976年製、最終型ミリオネアV。深みのあるグリーンがとても美しく、ABUの5000Dなどのグリーンより自分好みで気に入っています。そんなミリオネアVを実釣でも使えるようにロッドを組み上げてみました。テーマは
"The Greenie" w
グリップはTrue TemperのSpeed Lockを組み合わせました。1950年代のものです。
ロッドブランクは蛍光グリーンカラーのブランクを選びました。このタックルを使って、ある釣りをしてみる予定です。それはまたの機会にブログ記事にしようと思います。
謎多き初代ミリオネアV…。1973年の販売から1年後の1974年には新設計(ABUとは全く異なる仕様)のミリオネア5Hが販売されました。それでもVはすぐにカタログ落ちすることなく、5Hと同期間に販売され続けました。一説にはABUとの訴訟の情報もありますが、何らかの決着がつき (和解?)、期間限定で販売が継続できたのかもしれません。
模倣、コピーモデルといったリールは、北米釣具商社からのオーダーで日本メーカーが製造したケースが多く、模倣釣具は日本メーカーが…というより、北米メーカーのお家芸なんじゃないか…と思ってしまいます。ダイワの場合も "オリムピック81" のケースと同じく、USダイワの北米市場戦略からつくられた製品であったと考えるのが自然です。
第二世代のミリオネア5H以降のダイワベイトキャスティングリールは、ABUやその他メーカーのお手本となっていく構図に変わっていくところが面白いところです。
何にしてもお気に入りな "ミリオネアV" は、豊富な流通量をほこるアンバサダーパーツの流用が可能なわけで、エンドユーザーからしてみれば歓迎すべきことなのかもしれません。ミリオネアVは実釣でもどんどん使っていこうと思います。
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