いにしえのマシンカットデザイン ~ OLYMPIC WAVE STAR No.50 ~

Fishbone

2022年03月19日 17:32


Olympic WAVE STAR No.50
CONVENTIONAL REEL


今回は、オリムピック釣具のマルチプライングリールとしては珍しい(?)マシンカット・モノコックボディのWAVE STAR No.50のお話です。



WAVE STAR。オリムピック釣具の情報が乏しいので、正確な年式は不明ですが、おそらく1973年〜1975年にカタログモデルとして登場したものだと思われます。定価2550円。No.50のみのワンサイズ設定で、オリムピック製品でいうところの51型サイズになります。

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ボディーカラーはシルバーとブラックの2種類がラインナップされていました。ギア比は 2 : 1 のローギアード設定です。日本のマルチプライングリールの需要のメインは磯釣り (石鯛釣り) だったので、ウインチとしての性能を重視した設計だったのでしょう。



パッケージには " CONVENTION REEL " とプリントされています。 誤植なのか?何なのかはわかりませんが、本来、この手のリールは形容詞の " CONVENTIONAL " (従来の…) を使います。CONVENTION REEL だと、意味的には " 集会リール " になってしまいます…w



WAVE STARの大きな特徴は、フルメタルのマシンカットボディーであることです。オリムピック製マルチプライングリールのラインナップ全体を見渡してみても、ベークライト樹脂プレートのFIGHTERシリーズやDolphinシリーズなどの、PENNリールタイプが主流であった中、フルメタルボディーのリールは珍しいものでした。また非常に機械精度が高く、スプールの回転は驚くほど軽くブレがありません。おそらく当時のオリムピック製マルチプライングリールの中では、トップの回転性能であったと思われます。



WAVE STARの機械精度の高さもさることながら、キャストコントロール(キャストブレーキ)の精度も非常に高いものでした。スプールシャフトにテンションをかける通常のメカニカルブレーキに加え、樹脂製ブレーキパッドがスプールエッジに直接制動をかけるブレーキシステムを採用していました。キャストコントロールは上部のダイヤルを回すことで調整できます。二重のブレーキ構造はOCEAN CITYのリールでよく見られた仕様ですね。



そして何といってもコレ! ネジ込み式サイドプレートを外すことで簡易分解ができます。画像の状態までの分解は工具不要なのです。

勘の良いヒトならもうお気づきだと思いますが、マシンカット・フルメタルボディーで簡易分解 Take-Apart 仕様のリールといえば…

WAVE STARは… A.F.Meissellbach(マイセルバック)のTaka-Part(タカパート)や Tri-Part(トライパート)リールの構造をまんま踏襲しているのです。

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画像手前は A.F.MeissellBach Tri-Part 580。画像奥がOLYMPIC WAVE STAR No.50。ボディーとプレートの構造はまんま同じですね。WAVE STAR は海釣用キャスティングリールとして、キャストコントロールやスタードラグを搭載しています。



A.F.Meissellbach Taka-Part 480の登場が1903年。オリムピック WAVE STAR は、それから約70年後に登場しました。20世紀初頭のA.F.Meissellbachのパテントは、当然の事ながら1970年代にはすでに無効だったので、パテント面はクリアしていました。オリムピックはこのリールで新規にパテントを出願しています。それがどこの部位なのかはわかりませんが、少なくとも日本国内においては、斬新づくしなリールであったわけです。

A.F.Meissellbach の正当な末裔といえば Bronson (JA Coxe や Heddon) になるのですが… 70年後の日本でその時代に合った付加価値をつけて完全再現された Olympic WAVE STAR は単なる模倣品ではなく、A.F.Meissellbach の末裔といって差し支えないと思うのです。

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