2021年06月13日
国産マルチプライングの黎明 ~ OLYMPIC No.51 ~
OLYMPIC No.51 オリムピック 五一型リール スタードラッグ装置付
OLYMPIC No.61 オリムピック 六一型リール スタードラッグ装置付
日本の海釣用リールは、古くは " 大磯リール " に代表される木製のシンプルなセンターピン構造のものが使われていました。それも一部地域で使われた程度で極めて特殊な釣具でした。そして国産初の金属製リールは、1928年(昭和3年) オリムピック釣具創業者の植野善雄氏考案による" 犬印リール (のちのフィッシュオリムピック リール)"。
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戦後間もない頃、北米釣具メーカーOCEAN CITY社からの商談がきっかけで、植野オール金属製作所(オリムピック釣具)で製造された国産初のスピニングリール。オリムピック81型。
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日本の " フィッシングリール " の普及は、オリムピック釣具の功績が非常に大きいです。今回ブログに取り上げるのは海釣用リール。国産初のスタードラグ・マルチプライングリールのお話です。
オリムピック五一型。
国産初のスタードラグ・マルチプライングリールです。年代がはっきりしないのですが…1955年(昭和30年)前後に登場したと思われます。当時のオリムピック釣具からは、このリールについての用途はこう謳われていました。
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用途(*原文そのままです)
1貫以上の石鯛や、10kgを越す寒鯛の様な、荒磯の底物釣りには欠くことの出来ないリールで、既に此の釣りに使用されてから永い優れた実績を有しております。又熟練者は砂打の投釣に使用してスピニングリール同様の効果をあげて居られますし曳釣(トローリング)に御仕様になっても釣味は格別です。
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北米では、この手のリールは、コンベンショナルリール(Conventional Reel)と呼ばれていました。和訳すれば " 従来型 " リール…。日本のリール普及の変遷は、センターピンタイプのリールに始まり、次にスピニングリールが急速に普及していきました。マルチプライングリールは、その後に登場したものです。オリムピック製品でざっくりいえば、フィッシュオリムピックリール → 100型横転式リール → 93型スピニングリール → 51型…といった順で市場投入されました。北米とは異なる順番で普及していったわけです。
そんな理由からなのか? 日本の釣具業界では " コンベンショナルリール " の呼称は浸透しなかったようです。後発・新参のリールをコンベンショナル(従来型)リールと呼ぶことに抵抗があったのかもしれません…。その他にマルチプライングリール、増速リール、キャスチングリールといった呼ばれかたもされ、これといった固定名称は無かったようです。現在では" 両軸受リール " と言った方が通りが良いです。
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マルチプライングリールが日本の海釣りで使われるようになったのは、磯釣り(石鯛釣り)でした。日本の石鯛釣りは戦後しばらくは、オリムピック100型、80型の横転式リールもしくは固定脚リールが使われていましたが、薄い金属ボディは高負荷がかかると歪んでしまい大型魚を釣りあげることが非常に困難でした。そんな理由から一部の釣り人は、OCEAN CITYやPennといった外国製リールを個人輸入して使っていました。その堅牢性やキャスティングのしやすさ(←オリムピック100型に比べてw)は大歓迎されたそうです。何よりも、それまで獲れなかった大型石鯛が釣り上げられるようになったのです。
ちなみに日本の磯釣りと相性が良かった外国製マルチプライングリールは、Penn Surfmaster などのサーフキャスティングタイプのリールでした。北米のサーフの大型魚を釣るためのリールが磯の底物釣りにマッチしたというわけです。
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日本のマルチプライングリールの需要は、ほぼ磯釣り(石鯛釣り)であったわけです。そこでようやく国産のオリムピック51型の登場です。
オリムピック51型は、Pennリールの内部機構を模倣し、ハンドルノブやモデル名プレートといった小パーツの意匠はOCEAN CITY風にして作られました。石鯛釣りに最適とされたサーフキャスティングリールではなく、ボトムフィッシングタイプ(ベイリール)で仕上げられました。画像は51型と同クラスのPenn Long Beach No.60との比較です。
Penn Delmar No.285
参考比較はPenn Long Beachにしていますが、51型のサイドプレートはベークライト樹脂のみで構成されています。仕様的に Penn Delmar No.285 を模倣していると思われます。
スプールはアルミ製の軽量スプールが採用されています。ここはOCEAN CITYっぽい要素ですね。日本国内では金属(アルミ)スプール仕様のみの販売でしたが、輸出向けの51型には樹脂スプールの設定もありました。
画像左からOCEAN CITY No.112D , オリムピック51型 , Penn Long Beach No.60。こうして並べてみると、51型がOCEAN CITYとPennの合いの子のようなリールであることが良くわかりますw
オリムピックは、51型に続いてワイドスプールの61型を追加しました。
61型ではロッドクランプが取り付けられる仕様となり、形状的にはサーフキャスティングタイプとなりました。日本の石鯛釣りでは、61型を使う釣り人が多かったようです。
ただ…サイズがやや大きすぎる、と評されていた事実もあり、日本の磯釣りに最適なサイズはPenn Surfmaster No.150かNo.200 と言われていたようです。
オリムピック51型、61型も、OCEAN CITYやPennと同じ赤ノブを採用したロットがありました。画像は赤ノブ三巴です…w 画像手前はオリムピック51型。奥左はPenn Monofil No.27。右はOCEAN CITY No.581。
オリムピック51型、61型は、後に " FIGHTER " というモデル名が付けられ、サイズも各種揃い1970年代まで販売されました。オリムピックは、その他にも、ストロング、ドルフィンといったマルチプライングリールをリリースしていきました。それらは51型、61型と同様に輸出され、へドン版ドルフィンなどは、なかなか魅力的なリールでした。
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