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2020年12月03日

富士はニッポン ~ Fuji Plastic side casting reel No.20 ~

今回も国産オールド…ニッチな昭和ネタですw

富士はニッポン ~ Fuji Plastic side casting reel No.20 ~

Fuji Plastic side casting reel No.20
ガイドやグリップといったロッドパーツを(ほぼ独占で)製造販売しているFuji(富士工業)。かつてはロッドやリールの製造販売もしていました。今回は通称 " 横転リール " と呼ばれるタイコリールのお話です。

富士はニッポン ~ Fuji Plastic side casting reel No.20 ~

画像の富士リールはプラスチック製の最小サイズ20型。ナイロン3号が100mほど巻けるものです。富士リールは1960年代に販売され90年代までは釣具屋の店頭でもよく見かけました。この手のリールはチヌのイカダ釣りやヘチ釣りで使われることが多いのですが、1960年代当時は、メーカー公式に投釣用小型リールとして販売されていました。キャストポジションは見てのとおりスプールを90度横転させてスピニングリールのようにキャスティングします。でも…販売開始当時はキャスト時は人差し指にラインを掛けるのではなく、親指でロッド上部にラインを押さえ込みキャストするよう取り説で解説されていました。

横転リールの起源は英国のシングルアクション(1:1)センターピンリールです。ベイトキャスティング(ぶっ込み釣り)の需要が多かったことから、ハーディーやオールコックといったメーカーがキャスティング用のセンターピンリールを製造販売していました。それらはスプールを回転させてキャストする性質上、扱いに技術を要する…つまりバックラッシュが問題となっていました。1880年代、キャスティングリールの改善が模索され、スコットランドのマロック社が " サイドキャスター " というスプールを90度横転させるリールを販売しました。フィックスドスプールキャスティング…。横転リールの元祖です。それがのちにスピニングリールに進化していくわけです。

日本では、1950年代には植野精工(オリムピック釣具)がスピニングリールの販売をはじめていましたが、日本のキャスティング(ぶっ込み釣り)文化はまだまだ発展途上で、高価なスピニングリールの普及には時間を要しました。60年代までは横転タイコリールのほうが圧倒的に普及していたようです。

タイコリール需要の高さには、もうひとつ理由があったと考えられます。それはハンドルの巻き方向…。ハンドルの左右ではなくスプールの回転方向です。日本の道具は古来から " 引き " の文化です。刀や包丁などの刃物は引いて切る。ノコギリも引いて切る。木駒ではじまった日本の糸巻きリールも " 引き巻き " (ハンドルを手前にまわす)で使うものでした。西洋の押す道具と日本の引く道具の文化のちがいから、押し巻きのスピニングリールの普及に時間がかかったのではないか?…と推察しています。現在でもヘチ釣りで使われる木駒は引き巻きで使うのが普通です。富士リールの取説にも引き巻きを " 純巻き " として解説されています。

富士はニッポン ~ Fuji Plastic side casting reel No.20 ~

富士リールの面白いところは、横転リールの宿命… " 糸よれ " の対策にあります。富士リールのスプールには漏れなくラインクリップが付いています。これは保管用の糸止めではありません。キャストしたらラインをいったんクリップに止め、そこを起点に、キャスト毎に巻き取りを純巻きと逆巻きを交互に行うのです…。富士リールユーザーすべてが、この使い方をしていたかどうかは怪しいところですが、糸よれ対策としては理屈や道理はあっていますね…。

メーカー非公式(?)としては、富士リールのスプールエッジは表裏が対象の同形状になっています。そこに目をつけた釣り人が、本体からスプールを外して裏向きにして、両手にロッドとスプールを別々に持ってキャストする、撚り取りの裏技がありました。のちにメーカー純正で " 撚戻しリール " という、スプールを表裏反転して本体に脱着できるタイプが追加されました。

富士はニッポン ~ Fuji Plastic side casting reel No.20 ~

1日に何千回もキャストを繰り返す現在のルアーフィッシング等ではありえない仕様のリールですが、世界的に見れば横転リールは根強いファンがいて、オーストラリアのAlveyというメーカーは、現在も横転リールを製造販売していたりします…♫


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