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2021年07月25日

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~
A.F. Meisselbach
TAKA-PART No.480
TRI-PART No.580
TRI-PART No.581 Free Spool
OKEH No.620 Free Spool-Level Wind


今回は1900年代初頭に登場したA.F. Meisselbach製ベイトキャスティングリールのお話です。

画像左から OKEH No.620 ,TRI-PART No.581 ,TRI-PART No.580 ,TAKA-PART No.480。ぼくが所有する A.F. Meisselbach のリールたちです。過去記事でいちど TRI-PART No.580 を投稿しましたが、今回は他のリールもまとめて紹介したいと思います。



先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

A.F. Meisselbach & Brothers Manufacturing Company(A.F. Meisselbach Manufacturing Company)は、米国の初期のリールメーカーです。Shakespeare 社(1897年創業)より古く、1886年に創業しました。Meisselbach は米国では「マイセルバック」と発音します。日本では「マイセルバッハ」の方がとおりが良いようです。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~ 先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~
A.F. Meisselbach & Bro Mfg.
Amateur Trolling and Salt Water Reel


同社初のリールは真鍮製ニッケルメッキの "Amateur" という、シングルアクション・トローリングリールでした。しばらくは(1902年までは)高品質なフライリールを製造していましたが、商業的には上手くいっていなかったようです。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~
A.F. Meisselbach & Bro Mfg.
TRI-PART No.581 Free Spool
A.F. Meisselbach Mfg.
TRI-PART No.580


1903年。(満を持して)マルチプライングギアのリールの製造を開始しました。簡易な分解構造設計を取り入れた100ydサイズ " TAKA-PART No.480 " を発表。1906年にはTAKA-PARTより、ひとまわり小さな80ydサイズ " TRI-PART No.580 "を発表し、独自のフリースプール機構を搭載したTAKA-PART No.481 , TRI-PART No.581 を追加しました。これらは1907年にパテント出願し1909年に認可されました。

A.F. Meisselbach & Brothers Manufacturing Company は1917年に社名を A.F. Meisselbach Manufacturing Company に変更し、1921年にはリール生産の拠点をニュージャージー州ニューアークからオハイオ州エリリアに移しました。1931年にはBronson Reel 社傘下となり、J.A.Coxe / Bronson ブランドで長年培ったリール製造技術が活かされました。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~
A.F. Meisselbach & Bro Mfg.
TRI-PART No.581 Free Spool
A.F. Meisselbach Mfg.
TRI-PART No.580


TAKA-PART , TRI-PARTの大きな特徴は、真鍮棒(バーストック)からマシンカット加工され、フレームとピラーが一体成型(モノコック)の非常に精度の高いリールでした。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

Take-Apart(簡易分解構造)も熟成され、工具無しで主要パーツを分解することが可能でした。注油やクリーニングなどの基本メンテナンスに工具は必要ありません。(初期の3スクリュー、または2スクリューモデルは工具を必要としました)A.F. Meisselbach のバーストックマシンカット技術は、長年培ってきたフライリール製造技術の賜物といえるでしょうね。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~
A.F. Meisselbach Mfg.
TAKA-PART No.480
Enterprise Mfg.
PORTAGE SENTRIE-100yd


他社の同クラスリールと比べてみました。画像左は TAKA-PART No.480(100yd) 右は PORTAGE SENTRIE(100yd) です。A.F. Meisselbach のマシンカットフレームは、他社の同クラス(ラインキャパシティー)リールより、ボディーをコンパクトにできる、というメリットがありました。レイズドピラーリールと同様の発想といえますが、マシンカットリールは、ピラーの出っ張りが無いぶん、よりコンパクトになります。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~ 先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

画像は1911年のA.F. Meisselbach & Bro.カタログです。TAKA-PART(100yd)が4ドル。TRI-PART(80yd)が3ドルの価格設定となっていました。現代の貨幣価値に換算すると113ドル、85ドルといったところです。当時の最高水準の機械加工技術を注ぎ込んだリールが、現代貨幣価値で113ドルとは…すごいことです。それでも1900年代初頭の物価水準からすれば、高額なものだったのかもしれません…。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~
A.F. Meisselbach Mfg. TAKA-PART No.480

画像のTAKA-PARTは、スタンダードモデルのNo.480です。約100年前のリールとは思えないほど機械精度が高く、所有満足度も高いです…。モデル名の " TAKA-PART " はおそらく Take-Apart(分解の意)をもじって名付けられたのでしょうね。

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A.F. Meisselbach のバーストックリールには、独特な挙動をする " フリースプール機構 " を搭載したモデルの存在も注目すべき点です。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~
A.F. Meisselbach & Bro. Mfg. Co.
TRI-PART No.581 Free-Spool


画像は、TRI-PART No.581 Free Spool を分解したものです。工具はいっさい使わず、ここまで分解することが可能です。画像中央のピニオンギアユニットが A.F. Meisselbach のフリースプール機構の要となるパーツです。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

ちなみにこのTRI-PART No.581は、A.F. Meisselbach & Brothers Mfg.時代(1906年〜1916年)のもので、ぼくが所有するMeisselbach リールではいちばん古いものです。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~ 先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

Meisselbach のフリースプール機構は、動作的には Douglass Free-Spool と同じで、ハンドルを逆転させるとスプールフリーになり、巻き上げでスプールが再接続される仕組みです。Douglass Free-Spool よりパーツ構成がシンプルで壊れにくい非常に優れた機構でした。このフリースプール機構は、のちのJ.A.Coxe / Bronson リールの基本設計となるのでした。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

画像はフリースプールユニットです。ハンドルを回すことでカムが連動する仕組みです。ハンドル逆転で真鍮パーツの出っ張りが引っ込みピニオンギアとスプールが分離します。このパーツは非常に精度が高く、キャスト時は何も考えず、そのままキャストすれば瞬時にフリーに切り替わります。つまり、ハンドルを逆転させずともキャストが可能ということです。A.F. Meisselbach の優れたフリースプール(カム連動)は、J.A.Coxe / Bronson リールにそのまま採用されました。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

この機構のメリットはスプールとピニオンギアにフリースプールメカが集約されているので、その他のパーツはスタンダードモデル(TAKA-PART No.480 や TRI-PART No.580)とほぼ共通であることです。スタンダードモデルとフリースプールモデルの外観上の見分けが付きにくいのはこのためです。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

A.F. Meisselbach のフリースプールリールは使い方が独特というか…慣れるまではあつかいに戸惑うかもしれません。まるで自転車のペダルを漕いでいるような感覚なのです。ハンドルの巻き上げ中は駆動し、ハンドルを止めればスプールは空回りする…。そんな感じです。(慣れてしまえば、どうということはありません)

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

ハンドル逆転でフリーになる仕組みは、ラインを引き出すとフリーになることを意味します。ハンドルを保持していない状態で、少しでもラインを引き出すとフリーになります。サカナとのファイト中も、ハンドルから手をはなすと即フリーになります。

出ていくラインを止めるのはサミングです。ライン放出はハンドルを持っただけでは止まりません。少し巻き上げなければスプールは再接続されないのです。わかりやすく言えば、このリールは " 常時フリー " で、ハンドルを正転させたときだけ巻き上げられる…というものです。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~
TRI-PART No.581 Free Spool
TRI-PART No.580


これらの挙動はスタンダードなダイレクトリールも同じですが、ハンドル(メインギア)と完全に分離するフリースプールなので、フリクションがほとんど無くスタンダードリールより、うっかりミス(バックラッシュ)をしやすいかもしれません。ダイレクトリールに慣れているアングラーであれば問題は無いと思いますが、最初はハンドルが逆転しないことに戸惑うかもしれません。このあたり、釣り人によって好みが分かれそうです。

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そして、A.F. Meisselbach のバーストックマシンカットリールの集大成といえる(?)レベルワインドリール。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~
A.F. Meisselbach Mfg. OKEH No.620
Free-Spool , Level Wind


1922年。TAKA-PART No.481にレベルワインド機能を追加したモデル" OKEH " が発表されました。A.F. Meisselbach では初のレベルワインダー搭載リールになります。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

U字型の独特な形状のレベルワインダーが搭載されています。これはハンドルを逆転させるとスプールフリーになると同時に、レベルワインダーが前に倒れて接続が切り離されます。

先進のバーストックリール ~ A.F. Meisselbach Reels ~

OKEH No.620 は製造拠点がオハイオ州に移ってから製造されたものです。刻印も社名変更後の A.F. MEISSELBACH MFG.CO. になっています。

OKEH No.620の一連の動作を文章で説明するのは難しいので動画にしてみました。



レベルワインダーの挙動がとても面白く、意味なく何度も動作させたくなる(癖になる)動きです…w このリールにはキャスト後のラインピックアップ機能は無いので、ハンドル正転で倒れたレベルワインダーが起き上がっても、ラインを拾ってくれません。都度、手動でラインをレベルワインダーに掛けてやる必要があります。(そのためのU字型なんですね)自転車型フリースプール機構も慣れが必要ですが、レベルワインダーの扱いにも練度を要するという非常に癖のあるリールです。

この先、実釣に投入する予定はありません…w



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