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2021年03月21日

最後のハンドメイド高級機 ~ Pflueger Bulldog Oceanic No.2819 ~

最後のハンドメイド高級機 ~ Pflueger Bulldog Oceanic No.2819 ~
PFLUEGER BULLDOG OCEANIC No.2819
Free spool Surf casting
Double Multiplying reel


今回も1920年代のナックルバスターリールのお話です。OCEANIC No.2819。1927年製のフリースプール機構を搭載した海釣用ダイレクトリールです。OCEANICシリーズは、100yd〜400yd(50yd刻み)の7サイズ展開で、2タイプのジャーマンシルバー表面処理(光沢とサテン)で仕様分けされた全14モデルのラインナップでした。

最後のハンドメイド高級機 ~ Pflueger Bulldog Oceanic No.2819 ~

今回紹介するNo.2819は、300ydサイズ・光沢仕上げです。同サイズのサテン仕上げはNo.2859。リールフットの裏側に刻印されている数字がサイズ(ラインキャパシティー)を表します。

最後のハンドメイド高級機 ~ Pflueger Bulldog Oceanic No.2819 ~

1920〜1930年代当時のEnterprise Manufacturing社では、Four Brothers , Pflueger Bulldog , Portageの3つのブランドで商品展開していました。その使い分けの詳細は不明ですが、以前紹介した Pontiac No.357 は、Four Brothersブランド。今回の OCEANIC は、Pflueger Bulldogブランドになります。


最後のハンドメイド高級機 ~ Pflueger Bulldog Oceanic No.2819 ~ 最後のハンドメイド高級機 ~ Pflueger Bulldog Oceanic No.2819 ~

OCEANIC No.2819(2859)の当時の価格は$11.50。現代の貨幣価値に換算すると$175ほどでしょうか。約2万円強のリールを買うのは (今のぼくなら) 躊躇しないとは思いますが…当時の米国一般市民の価値観からすれば結構な高額品だったと思われます。そんな高級釣具も1929年から始まった景気不況(世界恐慌)を境に、コストダウン、大量生産時代へとシフトしていきます。以降のOCEANICシリーズはコストダウンと量産性重視の仕様に変わっていきました。

今回のハードラバープレートのOCEANICはフルーガーでは最後の高級仕様リールといえます。この仕様(ハードラバープレート)のリールは1930年代には徐々に淘汰され、一部のフライフィッシングリールを除き、第二次世界大戦以降は海釣用マルチプライングリールで使われることは無くなりました。

最後のハンドメイド高級機 ~ Pflueger Bulldog Oceanic No.2819 ~

フルーガーのキャスティングリールではお馴染み。ナックルバスターリールを象徴するアイテム…皮ベロ仕様です。現代の化学繊維のPEラインでサミングパッドを使うと、摩擦熱でラインが切れてしまわないか?と心配になってしまいますが、当時は麻を主原料としたブレイドライン(リネンライン)が使われていたので問題はなかったのでしょう。

最後のハンドメイド高級機 ~ Pflueger Bulldog Oceanic No.2819 ~

ぼくが1920年代(ハンドメイド時代)のリールを好む理由は、なんといってもリールを構成するパーツに魅力があることです。OCEANICは、ハードラバープレートをジャーマンシルバーフレームで覆うスタイル…。かつてジュリアス・ボムホフのパテントだった仕様です。この年代のOCEANICには、ボムホフリールの(パテント解禁後の)高級仕様が取り入れられているのです。画像の奥側2台のリールは1930年以降のコストダウン化されたものです。(真鍮製メッキ無し)

最後のハンドメイド高級機 ~ Pflueger Bulldog Oceanic No.2819 ~

フリースプールは、前回紹介した Ocean City model 2707 と同じ機構が採用されています。クラッチレバーを倒すとメインギアが横方向に動いてピニオンギアを切り離す仕組みです。これはジュリアス・ボムホフのB-Oceanリールのパテントを回避するための仕様です。今では当たり前となっている、コの字型切り欠き付きピニオンギアがメカプレート側についていて、ピニオンギアが引っ込むことでスプールとの接続を解除する仕組みは、ボムホフのパテントで守られていたわけです。パテント期限は1928年だったので、OCEANICにはギリギリ採用できなかったということですね。(←1927年製)


ジュリアス・ボムホフは現代のベイトキャスティングリールの基本構造のほぼすべて(レベルワインダーを除く)を発明・パテント化したメーカーで、それらのパテント期限は、クリッカーは1919年。B-Ocean式フリースプール、スタードラグ・アンチリバースは1928年に効力を失いました。以降はフルーガー、その他メーカーの海釣用キャスティングリールは、ボムホフ時代の基本機関を取り入れつつ改良が進められ大量生産されていくのでした。



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