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2021年05月23日

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

Penn SQUIDDER No.140
FINEST IN CASTING REEL
BALL BEARINGS - AIR BRAKE


Pennリールの数多いラインナップの中でも珍しい専用設計。ストライプドバス釣りに特化したサーフキャスティングリール…。今回は過去記事でも何度か取りあげてきた、大好きな Penn SQUIDDER のお話です。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

Penn SQUIDDER は1938年のカタログ掲載で初お披露目され、市場投入は1941年。その初代モデルは、No.140 と No.140L の2モデルでした。(※初代140Lはレフトハンドル仕様を指します)

1960年代初頭にはナローボディーの No.145 , No.146 が追加され、1985年にはアルミスプールのNo.140L(レフトハンドルは140L-LHに改め), No.146Lが追加されました。メタルスプール仕様は140M , 145M ,146M の3モデルそれぞれに設定されていました。No.145 は1970年代に、No.146 は2000年代にカタログから姿を消しました。SQUIDDERの主力モデル No.140 は非常に息が長く2006年まで製造販売されました。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

画像は初代 SQUIDDER No.140 です。初代モデルはニッケルシルバーメッキフレームに黒ベークライトプレート・ベークライトスプール仕様。初代モデルの特徴は、リールフットにロッドクランプを通す四角い穴が無いこと。そして左プレート内側のクリッカー板バネが1ヶ所のリベットで固定されていることです。今となっては超希少なリールで、(そもそも日本に輸入され始めたのは1960年代以降) ぼくも実物は見たことがありません…。当時の販売価格は $25。現代の貨幣価値に換算すると 約$467 です。Pennリールの中でもかなりの高級品だったようですね。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~ ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

女性プロアングラー サラ・チシー・ファリントン ( Sara "Chisie" Farrington ) の著書 Women Can Fish (1951年発行)では、1940年代のサーフフィッシングが紹介されていて、著者のタックルに SQUIDDER が使われていました。ロッドはウッド製の独特な四角形断面ブランクの TYCOON TACKLE サーフキャスティングロッドです。当時の最先端のサーフフィッシングタックルに SQUIDDER が紹介されていたわけです。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

余談ですが、1940年代のPennリールカタログには、サーフフィッシング用のタックルや釣法などの解説が掲載されていました。これが興味深い内容で、当時のタックルや釣法について知ることができます。画像の図はサーフフィッシングのぶっ込み仕掛けです。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~ ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

サーフロッドはPennカタログの解説では、6〜7フィートティップで、30〜42インチのロンググリップが推奨されていました。これはブランク長7フィート、グリップ長42インチと読み取ります。この時代のサーフフィッシングロッドは木製ブランクのグリップジョイントが主流で、カタログ上のサイズ表記は、ティップセクション(ブランク)とグリップセクションが別々になっていました。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~ ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

ロッドの全長は(グリップ込みで)最大でも10フィートほどで、日本人の感覚からすると投釣竿にしては少し短いかな…とも思いますが、木製ブランクという性質上ロングロッド設計には向かなかった、という理由があったのかもしれません。かなり重いロッドだったであろう…ことが想像できますw

SQUIDDER が発表された1938年〜は、竹の輸出国、日本が戦争中であったため、日本はもちろんのこと、東南アジア諸国からの竹の輸出がストップしていました。そのため欧米では竹素材の価格が高騰し、高価なスプリットバンブーロッドは一般向きではありませんでした。フィッシングロッドの素材はウッドかスチールで代替していたわけです。この状態は戦後のグラスファイバーロッドが発明されるまで続きました。



ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

さて、SQUIDDER No.140。ウチのは1960年代以降のモデルです。画像はダイワ精工の正規輸入モデルです。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

SQUIDDER No.140 の諸元は、本体重量496g / ギア比 3.3 : 1 / エアブレーキ軽量樹脂スプール "Synchronized Spool" に、ボールベアリング軸受。9スレッド(27lb)リネンラインが200ヤード巻けるラインキャパシティーです。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

ネジ1本を緩めるだけで右プレート(ドライブユニット)が外せる簡易分解 "Take-Apart" は非常に良くできています。Pennのサーフリールシリーズの美点ですね。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

そして、SQUIDDER の大きな特徴であるアンチリバース・オンオフレバー。Pennリールのアンチリバース・オンオフは SQUIDDER に初採用され、後年の ディープフィッシング用の MARINER シリーズ、そしてNo.10 Mag tunedにも採用されました。

1938年当時のニューヨーク系キャスティングリールは、ナックルバスターリールが主流で、ドラグは Williams Drag などの後付けハンドルドラグが定番でした。当時のサーフアングラーはそれらのタックルに慣れ親しんでいたわけです。

ぼくが思うに…Penn社は最新のアンチリバース・スタードラグを搭載した高級モデル SQUIDDERを市場投入するにあたり、従来のナックルバスターや、ハンドルドラグに慣れ親しんだアングラーへの配慮から、従来仕様でも使うことができるストッパーオフ機能を追加したのではないか?と推察しています。

SQUIDDER はスクイディング "Squidding" に最適化されたリールで、その使い方は早巻きの釣りがメインとなります。リーリングやフォールの繰り返し動作はアンチリバースオフ(ラチェットオフ)のほうが使い勝手が良い…というのもストッパーオフ追加の理由だったのかもしれません。これは1950年代後期の淡水用ダイレクトリールに、アンチリバース・スタードラグが搭載されていく過渡期にも同様な仕様が見られました。Pflueger SUPREME などは、まさにそれです。


ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

ここでSQUIDDER のモデル名の由来となったスクイディング(Squidding)について少し解説をします。

スクイディングとは、かんたんに言うとサーフのジギングです。対象魚はストライプドバス。Eel Tin Squid と呼ばれるスズと鉛の合金で作られた、イカのカタチに似たジグヘッドと、Eel(ウナギ)を組み合わせて使う釣法でした。ウナギを餌としてではなく、ジグヘッドルアー(の素材)として使うのです。今でいうところのロングストレートワームのジグヘッドリグでしょうか。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~ ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

画像は一般的な Tin Lure と呼ばれるもの。Eel Tin Squid を簡略化したようなフェザーテイル仕様です。こちらはストライプドバスの特効餌であるイカ(の動き)を模したルアーで、使い方はキャストしたらフリーフォールでボトムを取り、高速リトリーブ、もしくはボトムからルアーを跳ね上げ、またフリーフォールで着底…の繰り返しです。ジャークアクションからフォールする姿勢がイカの動きに似ていることから、こちらも Tin Squid もしくは Tin Lure と呼ばれています。 伝統的な Eel Tin Squid や Tin Lure を使った釣法を総称して、スクイディング(Squidding)というわけです。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

Penn SQUIDDER は、スクイディングに最適化するために、エアブレーキスプールやボールベアリング軸受が採用されました。これらの仕様は " 遠投性能アップのため " と誤解されがちですが…じつはそうではなく、40〜50mほどのルアーキャスティングを効率よくするためのもです。そして何といってもスクイディングに不可欠な " フリーフォール性能 " に重きを置いている点です。非接触型のエアブレーキやボールベアリング軸受は速やかなフリーフォールに最適な仕様だったわけです。なので、Penn 公式に SQUIDDER はメカニカルブレーキは不要です…と謳われていました。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~ ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

ティンスクイッド "Tin Squid" を使ったスクイディング " Squidding" のためのリール…。これが SQUIDDER のモデル名の由来とされています。

↓ちなみに 旧時代の Tin Squid は現在も(レプリカとして?)作られているんですね。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~




ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

ぼくが所有する SQUIDDER シリーズ。1960年代以降の3世代です。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

世代毎に樹脂プレートの色がちがうのもPennリールの面白いところです。左から古い順に、ダイワ精工正規輸入の初期モデル (マルーン)、ダイワ精工正規輸入後期モデル (ダークマルーン)、そしてペンリールジャパン正規輸入の最終モデルNo.140L (ブラック)です。最終モデルは1941年の最初期モデルの黒プレートが復活しているところがまた良いんですよね…w

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

最終モデルはパーツ構成が若干簡素化されていますが、スクイディングリールとしての素性は初代モデルから受け継がれています。そんなところを証明する(?)動画をあげてみました。



スプールを軽く指で弾いて回転させています。そこそこの重量があるアルミスプールなので慣性で回り続けるのは当然として…ライン無しのスプール素体でこの回転性能はかなり良いと思います。Penn SQUIDDER の機械精度の高さを表しています。

もうひとつ…古い動画で画質が悪いですが、SQUIDDER のキャスティングです。



これはスクイディングキャストではなく、日本の磯釣りスタイルのキャスティングです。日本での SQUIDDER の位置付けは磯(底物)釣りリール。砂浜の投げ釣りではなく、石鯛釣りのリールとして名を馳せました。大型魚を釣る米国のサーフフィッシングリールが日本の底物釣りにマッチしたというわけです。日本のサーフリール普及については別の機会にブログ記事にしようと思っています。

ストライパーフィッシング専用 ~ Penn SQUIDDER No.140 ~

SQUIDDER は、ここ数年で中古品流通価格がかなり高騰しています。eBayなどでも100ドル以上の価格が付けられていたりします。それ以前は非常に安く入手できていたんですけどね…。価格高騰の理由はわかりませんが、オールドPennリールは骨董価値より、実用価値が高いのが特徴なので実用品としての人気なのかもしれません。


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